SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2009/4/20 寛大なブランド

最近、おしゃれな店に入るのがこわい。以前は、服でもカフェでも気に入ったら迷わず入っていたのに。まだおしゃれを引退したつもりはないのだが、よく知らないブランドだと気おくれしてしまう。

スタイルやセンスによほど自信のある人でない限り、40になって20歳の女の子が好きな服を着たいとは思わない。そんなこちらの心情を察して、店員がさりげない優しさを見せてくれるとき、私は安心してつい買ってしまう。

もしも今がまだ20世紀の成長社会だったら、もっと買い物がしやすかったはずだ。皆が中流で、皆に上昇志向があるから、「40歳の憧れるブランド」も存在していただろう。だが、今は、誰にも疎外感を抱かせないブランドが好かれる。成熟社会での一人一人バラバラのニーズに個別に対応するのではなく、むしろ丸ごと受け止めてくれるような寛大さが求められている。「何を着たらいいかわからない」を「何を着てもいいんだね」に変えてほしいのだ。

だから、“こわくない”、人を選ばないモノやサービスがはやる。店員のホスピタリティーや品揃えで、客の年齢コンプレックスを吹き飛ばそうという意志があるかどうかまで問われる時代になっている。