SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2008/7/7 自虐と消費者インサイト

消費者インサイトとは、消費者を行動に向かわせる深層心理を発見することである。アンケート調査で簡単にわかるようなものではない。心の奥底に潜む、本人も気づいていない本音を見つけてこその「インサイト」だ。

自己肯定意識が強すぎる人は、他人の本音に近づくことができない。例えば自身の育児が辛かった人は、「がんばる子育て」しか知らない。この場合、辛かった理由を自分の欠点も含めて分析しないと、周囲の助けを借りて育児を楽しむ今どきママの「がんばらない」精神性は理解できない。

桐野夏生氏の小説に「大事なのは変だと感じる感性と、何故だと考える想像力だ」という一節がある。探偵を職業とする父親から娘への言葉だが、これぞインサイトの基本だ。これを自分自身にも適用する。今の私は、ちょっと変だ。どうしてこんな状態になってしまったのだろう。かわいい自分をあえて遠くに突き放し、冷徹な視線で分析する。

深刻な状況に置かれたときに、それを洒落のめすくらいの気概がないと、インサイトの達人にはなれない。日々の暮らしでピンチに遭遇したら、インサイト力を磨くチャンスと思えばよい。おカネも時間もかからないトレーニング方法である。