SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報1999/3/8 いつも誰かと命がつながっている

かつて就職面接で志望動機を聞かれたとき、私は「人を喜ばせたい」と答えた。人とモノの間に介在し、新しい考え方を吹き込んで、彼らの困っていることを解決したかった。

人を喜ばせたいという気持ちは人間の本質だ、と国際的心臓外科医の須磨久善氏は言う。みんなが誰かを喜ばせたいと思うから、人が集まってきて、社会が成立する。人が喜ぶのがうれしいというメンタリティーこそが人類の生き延びる道だ。

患者さんの命を助けると喜んでくれる。その喜びが僕の命を元気にする。僕の家族が死ぬと、僕の命は弱くなる。だから命はみんなつながっている。僕だけのものではない(朝日新聞二月四日付)。

命を救うまでいかなくても、人のために何かをする力は誰にでもある。まずは身近な相手から始めてはどうか。家族や友人を喜ばせることができない人に、もっと大勢の人たちを相手にするのは無理だからだ。

現在妊娠中の私も、自分のためだけに何かをする時期の終わりを感じている。おなかの子が無事に誕生し、へその緒が切れてからも、いつも誰かと命がつながっていると感じられるような、そんな幸せな人生になるように手助けしたい。