SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報1999/8/2→週刊文春読むクスリ1999/12/2 笑いの効用

読むクスリ週刊文春19991202

出産して二カ月になるが、子供にいちばん驚かされたのは、生まれたその日にニヤリと笑ったことだ。これは生理的な笑いで、「空笑(くうしょう)」という。笑いの表情を示すための筋肉の動きは、生まれてから習得するのでなく、生まれつき持っている能力だそうだ。

イギリスの心理学者ボウルビーは、空笑のように生来備わっている行動が、赤ん坊と周囲の人を結びつけると考えている。実際、たとえ空笑でも、笑ってくれるとこちらの育児疲れが一瞬で吹き飛ぶ。笑いは、生まれた直後からコミュニケーションの手段として成立している。

乳児の空笑は、半年も経つと消えて、あやされてうれしいときなどに見せる「社会的な笑い」に移行する。さらに成長して社会の一員になると、笑ってばかりもいられなくなる。

だが、笑いの効用はあなどれない。笑う顔に矢立たず―気に入らない相手でも、笑顔で接してこられると嫌悪の気持ちがほぐれる。笑いは人の薬―笑うと血管や筋肉が柔らかくなって血圧が下がり、内分泌がよくなって若返るという。うだるように暑いこの季節、衰えがちな笑いの筋肉を、無理やりにでも動かしてみてはどうだろう。