SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2009/12/7 谷川俊太郎

この2年ほど、小学生に絵本を読み聞かせるボランティアをしているのだが、子どもたちの興味を引くのは、ストーリーそのものが面白い本ばかりではない。時にメッセージが存在せず、結論も曖昧な、つかみどころのない話に聞き入ってくれることがある。

最近では谷川俊太郎氏の『あくま』という詩の絵本。絵は和田誠氏だ。むかしばなしの中に入った少年が、あくまにともだちになりたいと言われ、自宅へ逃げ帰ってくる。そして机に頬杖をついて考えるのだ。「あくまとともだちにならなくて そんしたんじゃないかって」。

ここで、多くの子どもたちがニヤリとする。俺だったらともだちになるのに。僕もやっぱり怖いからやめとくよ。いろんなニヤリがある。みんな、ほんの一瞬、意識を異次元の世界へ飛ばして、あくまと遊んでみたのだろう。まさに「詩」のなせる技だ。

谷川氏は、朝日新聞のインタビューに答えて、詩情を感じるというのは、「生活の中で感じる喜怒哀楽とはまったく違う心の状態」になること、「自分と宇宙との関係のようなもの」を感じることだと言う。私は、詩とは自己の喜怒哀楽を表現することだと思い違いをしていた。「詩情」の何たるかを教えてくれた子どもたちの「ニヤリ」に感謝したい。