SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

LAVENDER CAFE

私が勤めている会社にいるがんサバイバーの御園生泰明さんは、自分も闘病中であるにもかかわらず、がんになっても笑顔で暮らせる世の中になることを願って、がんサバイバーのための活動をしている。彼は、2年前、術後でヨタヨタしていた私に、「生きている間を幸せに暮らしたいのは皆同じだと思います。にもかかわらず、がんという病気のせいで幸せになりにくい人もいるので、少しでもそれを解消できればなと思っています。そこに僕自身幸せを感じるということもあるので」と話してくれたことがある。

当時、自分のことで精一杯の私は、御園生さんに信じがたいほどの力を感じ、そばにいて役に立ちたいと思った。それで始めたのが、社内のがんサバイバーと、身近なサバイバーのサポーターが集まる場、LAVENDER CAFEだ。

がんと一口に言っても、部位、ステージ、バックグラウンド、ライフステージなどによっても悩みは様々で、受け止め方も人それぞれ全く違う。LAVENDER CAFEは、自分ががんであることをカミングアウトすることを強要するのではなく、「そうしてもいい会社の文化」をつくる第一歩でもある。違いを互いに慮りながら、「がんを抱えて働いている」という共通項のもと、安心して話せる場を作りたいと、主宰メンバー一同で考えている。

今夜は二回目のCAFEを開催した。国立がん研究センターの先生や、社外の3社からもサバイバーの方々が参加してくださり、他社事例や、体験談を話してくださった。

参加者同士のグループトークでは、がんになってから、職場の人や友達、家族がしてくれたうれしい手助けエピソードを紹介しあった。

私は、このカフェを支援してくれる役員に言われてうれしかったことを紹介した。

営業の最前線でたくさんの部下を率いて戦い続け、女性初の役員に昇格した人物。社員食堂で偶然同席し、蕎麦を食べながら数分話したことがあるだけだったが、そのときの密度の濃い短い会話に強さと柔らかさの両方を感じ、雰囲気にひかれた。あんな人が役員になったらいいのになあと思っていたら、なった。思わずお祝いのメールを送った。ちょうど術後半年だったので、手術をしたこと、これまで走り続けてきたが、人生観、仕事観が激変したこと、新しい人生を大切に生き抜こうと思っていること、そして、僭越ながら、重責だとは思うがぜひともこのままキラキラと走り続けていただきたいと書いた。

いただいた返信にはこう書かれていた。

「そうでしたか。大変な経験をされたんですね。人生観が変わる、その経験があなたを何倍にも豊かにしていると思います。」

私を「豊か」にしてくれるとは!なんてうれしいことを言ってくださるのだろう。豊かになった自覚はないし、がんになってよかったとまでは思わないが、たしかに私はがんになる前の自分より、なった後の自分のほうがよっぽど好きだ。うまくいかないこと、うまくいっていない人、自分とは違う考え方など、これまでだったらイライラのもとになっていたようなことに、しっかりと向き合えるようになった。生きていることを心底ありがたいと思えるようになった。

今夜も彼女は冒頭の挨拶だけでなく、最後の懇親会が終わるまでずっと会場にいて、1人ずつと話し込んでいた。役員といえば、冒頭の挨拶だけで帰るのが定番なのに。ありがたい。見守ってくれている、という安心感がある。ご自身の力をわかっていて、惜しみなく注いでくれる。想像力があるから、人の痛みがよくわかる。

高校生のころから、人は強くないと真に優しくはなれないと信じてきたが、強くて優しいこの人は実にかっこよくて、大好きだ。