SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2006/12/11 仲畑貴志、イマジネーション

昔のファイルを整理していたら、新聞の切り抜きが出てきた。コピーライターの仲畑貴志氏のインタビュー記事だ。「人の痛みに思い至ることを含め、人が生きていく上で最も重要なのは“イマジネーション”だと思います」という箇所に赤線が強く引いてあった。おそらく当時、自分自身の課題として強く共感したから、線を引いたのだと思う。

初めての育児で、赤ん坊が泣きやまないという事態に直面したときも、“イマジネーション”がフル稼働した。満腹なのに、なぜ声がかれるまで泣くのか。まだ複雑な感情は持ち得ないとわかってはいても、乳飲み子なりの「怒り」や「哀しみ」の存在を感じ、途方に暮れた。それ以来、他人の喜怒哀楽に敏感になった気がする。

優れたターゲット・インサイトは、必ず「怒」と「哀」を丁寧に分析している。日頃から、人の怒りや哀しみに接したとき、それがどこから来るのかを洞察する癖をつけておくと役に立つ。

「怒」や「哀」の根源は、当人でないと簡単にはわからないからこそ、想像のしがいがある。私生活でも、「哀しみ」を理解する心のある人との交友関係は、一生ものとなる。“イマジネーション”、生涯のテーマである。