SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2005/7/18 独身男と母心

最近マーケティングプランナーのB君と仕事をして驚いたことがある。彼自身は二十代の独身男性なのに、世の母親の心を見事に見抜くのだ。その昔、私が産休に入る前、家にいる間に主婦心理のわかるプランナーになって戻ってきますと挨拶したら、「そうじゃない。かっぽう着でケータイのプレゼンをする方がかっこいいんだ」と先輩に言われたことを思い出す。

独身男と母心、かっぽう着と携帯電話。この意外性を生み出すのは、想像力だ。自分とはかけ離れた境遇の人のことを想像し、その心に近づく。おそらくどの仕事にも必要とされる能力の一つであろう。

例えば消費者調査を設計する際も、結果から「意外な発見」が得られるように、調査票をつくる段階で想像力をはたらかせて、想定の範囲外の仮説を立てる。

子供の頃は空を眺めるだけで、次々とイメージが湧いてきた。なぜ青いのか、触ったらどんな感じか、あの先に何があるのか。だが今は、何も感じない。すべてわかったつもりになっているせいだ。冒頭のB君は、ずけずけと物を言うが、人の話をよく聴く。その目は、空を見つめる少年のようだ。見習わねばと思う。