SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2004/4/26 Men for Others

鎌倉市のある私立男子校では、「Men for Others」を教育理念としている。他者のための人であれ、自分の力を喜んで人々のために生かせる人間になれ、ということだ。「自分」が氾濫している今の時代に、珍しいほど利他的な考えだ。

この学校で6年間を過ごしたある友は、教えの影響を受けてか、事あるごとに「心技体の総合力がピークに達する三十代、四十代こそ、自分の力を人のために使うべきだ」と息巻いている。

ここ半世紀の日本には、戦時中の全体主義への反動もあってか、個人主義を美徳とする傾向が強い。「自分らしく」、「自分探し」、「自分へのご褒美」……興味の対象が自分にばかり向けられている。その結果、本人さえよければ構わない、私の勝手でしょ、という空気が蔓延する。

自己責任の世の中ではあるけれど、自分のことだけ考えているのはおかしい。実際、三十路も半ばにさしかかると、家庭や職場で純粋に自分ひとりがうれしいということはなくなってくる。誰かがうれしいから、自分もうれしい。喜びには必ず自分以外の誰かがかかわっている。新社会人諸君も、人のために何ができるか今のうちから考えてみてはどうだろう。