SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2004/3/15 脱マニュアル人間

先日、四歳の娘がクッキーの缶を開けたら、残りはニ枚だった。そこで、このニ枚をあなたと弟とママの三人に均等に分けてね、と頼んでみた。三等分のやり方なんて知らないから無理だろうとたかをくくっていたら、彼女は試行錯誤の末にニ枚とも粉々に砕いた。それから破片を同数ずつ三人に分けたのだ。

そんな方法を想像すらしなかった私は、マニュアル的な発想をまだ持ち合わせていない者の強みを実感した。養老孟司氏は、「マニュアル人間」を「自分は本当は他人と違うのですが、あなたがマニュアルをくれれば、それに応じて何でもやって見せます」という倣岸不遜な人種と評する。

氏はまた、昆虫の標本を作る際の詳細な手順を記述しているが、それはマニュアルではなく、すべて自身の経験から独自に見つけたそうだ。洗濯用漂白剤を使って交尾器を抜くなどという方法も登場する。マニュアルなしでも具体的に仕事をやっていくうちに、どういう手順がいいのかはわかってくるという。

手軽に得た受け身の知識でわかったつもりになっていることがたくさんあるのではないか。そう意識することで、人生に起こる様々な問題を自らの思考によって乗り切ることができるだろう。