SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

勝つ難しさ

Kたちの公式戦デビューは、3勝2敗、ブロック10校中5位だった。決勝トーナメント進出ならず。ここ数年の先輩方のめざましい活躍により、都内屈指の強豪校に名を連ねてきたが、「おや?今年は弱いぞ」と思われたに違いない。が、強がりじゃなくて、負けてよかった。勝ち上がることの難しさ、常勝軍団の先輩方の偉大さを痛感できた貴重な負けだったはずだ。

軽い気持ちで入部したら、進学校のはずなのに、想定外の強豪校だった。練習量も半端なく、幸いバスケットボールが合っていたようで大好きになり、人生がバスケを中心に回り始め、あれあれあれ~という間に1年たって、一番うまいわけでもないのにチームメイトが選んでくれたという理由でキャプテンを拝命し、チームはトラブル続きでもチームとバスケが好きだから、もみくちゃになって突っ走ってきた。怒られたり、褒められたリ、泣いたり、笑ったり。まあそれはそれは忙しい1年だった。13歳の肩には重すぎる難題も、先生や先輩に見守っていただきながら、背負ってきた。解決する力はなくても、とにかく背負った。そこはわが子ながらあっぱれだ。

初日の朝には、「大会で試合するってどんな感じなんだろう」とつぶやくKの頼りなさそうな背中を見送った。

顧問の先生は、かの有名なバスケマンガの登場人物のモデルとなるほどの偉大なプレーヤーだ。キャプテンの特権で、親子ともども直接お話できる機会が多い。偉大なプレーヤーだった人の言葉は、強くて重い。Kはバスケだけでなく、人間力を鍛える教育を受けている。ラッキーだ。

今回の訓示で共感したのは、「全体を通して感じたことは、おまえたちには“執着心”が足りないということだ」。ボールを奪い取る、ライン過ぎても追いかける、つかんだら絶対に離さない、誰よりも高く飛んで最初に捕る、ぶつかられても、倒れても、何があっても離さない。1位2位のチームにはあふれている“執着心”。もっとがつがつといけ!もっともっと前へ前へ!と叫びたくなる。もっともっと肉を食べさせて、ガツガツした男に育てなければ、と猛省した。

バスケは泥汚れもないし、一見きれいに見えるが、実はリズミカルな格闘技だ。動きが速ければ速いほど、高く飛べば飛ぶほど、観ているもののsoulを直接ドドドとbeatしてくる。はまる。

一つ上の先輩方が、たくさん応援に来てくださった。Kの代がさんざん迷惑をかけたのに、駆けつけてくれて、ド迫力の応援をしてくださった。一つ下の後輩もマネをして、応援にどんどん熱が込められていった。これは負けられない。さすがにみんな奮起して、今日は快勝できた。ありがたい。

閉会式の前に、Kは、各校の先生やコーチにお礼の挨拶をして回った。そのとき、ブロック優勝したSK中学のコーチに言われたことが強く心に響いたそうだ。

SK中学のコーチ:この大会の感想は?

K:大会というものの雰囲気がわかりました。それと、これまでは先輩たちが簡単に勝っているのかと思っていたけど、簡単に勝てるものではないということがわかりました。

SK中学のコーチ:もちろん勝ち続けるのもいいけど、それだけではさらに強くはなれない。負けて悔しい思いをすることで進歩できる。だから、君たちは必ず進歩するよ。

ちょっとこのやり取りはなんだ!聴いただけで、泣けてくるじゃないか。どれだけ大事なことを言ってくれるんだ、SK中のコーチは!お金で買えない指導。これぞ教育。あー教職とっておけばよかった。

もう一つ、チームのエースでありながらトラブルメーカーだったチームメイトの話も。彼は、2敗した日のあとに「負けは負けだ。(ずるずると)ひっぱってもしかたない」と言い放ち、落ち込んだ空気を吹き飛ばすかのように明るく変な歌を歌い出したそうだ。その行動に、Kは逆に強さとリーダーシップを感じ、精神的にも助けられたようだ。これまで彼が意図せず起こしてしまうトラブルの数々を、キャプテンだからという理由で代わりに怒られてきたと先生や先輩から聞いてはいたが、Kは自分にはない彼の魅力を興味深く見ていた。相手のことを多面的に見て、感じて、仲間になっていく。もうだめだ、すばらしすぎて、泣けてくる。

実際、このチームは、試合前の円陣の盛り上がりっぷりや、終始仲が良さそうなところ、AチームもBチームも関係なく楽しそうなところも、いいチームになる予感がする。

恩師や仲間ができてきたら、親なんかせいぜい見守るだけ。ひそかに感動しながら、ときに見てないふりをしながら、ひたすら永遠に見守るだけ。うん、腹をくくって、見守るだけの幸せを満喫しよう。

大会を終えた今、Kの背中を見てみると、お、心細さが消えているよ。

海外旅行にも買い物にも行かず、中学校に通っただけの夏休み、スーパードラマチックでした。Thanks a lot!