SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

熊の気持ち

去年小6だったKは、塾の社会の先生から「K君はときどき天然ですね」と言われていた。

ある晩、電話台に無造作に置かれた答案に、夫がふふふと笑っていた。地方分権について述べよ、という問いに対し、Kは、里山に下りてくる熊の駆除は地方自治体に任されている、と書いていた。たぶんニュースで話題になっていたのだろう。事例としてはまあまあだが、この回答、締めの1行がふふふだった。

「……地方分権はいいけれど、撃たれる熊の気持ちも考えるべきだ」

ウケ狙いなどという高度な技ではなく、まじめに書いているから「天然」と言われていたのだと思う。丸をくれずに「人間のことについて書きましょう」と赤字でコメントをした塾の度量の小ささにがっかりする一方で、丸をくれる中学があることを願った。

たとえ点は取れなくても、もっと大きくなって、シナプスがちゃんとつながっちゃって、いろんなことがわかってしまっても、「熊の気持ち」が真っ先に頭に浮かぶ感覚は失わないでほしい。子どもの頃の大事な部分。どうなっていくのか、楽しみだ。