SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2001/4/30 不安消費

「モノは安くてあたりまえ」という世の中になってきた。半額ハンバーガーや発泡酒、低価格海外パック旅行などが売れている。その一方で、高級海外ブランド、価格六百万円強の高級車、百貨店の高額商品の売り上げも好調だ。

だが今の日本人を「安いモノを選ぶ人」「高級品志向の人」というように同質の価値観で束ねるのは間違いだ。ルイ・ヴィトンを抱えて二百五十円の牛丼を食べる。ユニクロを着てベンツに乗る。一人の中に多種多様な嗜好が混在するからである。

とはいえ、多くの人に共通する心理状態が新たな市場を創造しているのも事実である。「不安」はその代表格だ。ピッキングやストーカーによる犯罪が多発し、鍵や防犯カメラ・ブザー等の一大防犯市場が築かれつつある。全自動乾燥洗濯機が売れる背景にも、干した洗濯物で女性の一人暮らしであることが知られたり、花粉症が悪化したりする不安がある。

「ぷれままクラブ」のような妊娠中の女性サイトでも、出産育児という未知の経験への底知れぬ不安が商品購入に見事に結びつく様子を窺い知ることができる。不安解消につながるモノを買って、心を落ち着かせる。「不安」には消費を拓く力があるのだ。