米国の教育界がドッジボールの禁止を真剣に議論しているそうだ。人間を標的にすると攻撃的な子供が増えるからだという。学校での殺傷事件が多いので過剰反応気味なのもわかるが、ドッジボールは紳士学を身につける良い機会でもある。
投げるのも捕るのも下手だった私は、逃げ回った挙句足に軽く当てられて終わることが多かった。運動神経の鈍い子や女の子を最初に狙うのは卑怯だという不文律があった。痛くない程度にぶつけてくれたことで「男の優しさ」も知った。
日本の小学校では円周率が三でもよくなるそうだ。計算が簡単になり、間違う子供は減るだろう。だが人生は、そんなにすっきりしたものではない。必要ないから省略してよい、という理屈はあまり通用しない。むしろ、理不尽なことだらけなのだ。それでも人は、生きていかねばならない。
分数の形では表せない無理数。3.141592…と続いていく。なぜかなんて誰にもわからない。すべてに理由が必要だったら窮屈だ。もしも「訳がわからないけど、なんだかおもしろい」と感じる小学生がいたとしたら、3.141…は彼に「生きる力」を授けているのである。