SAILING POEMS

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電通報1997/9/1 猫

自分を動物にたとえると何か。私は、ずっと犬だと思ってきた。干支も戌だし、えさをくれればしっぽを振る分かりやすい性格だからだ。ところが最近、野良猫と暮らすこと三十年の旧友に、君は猫だと言われた。なぜかと聞くと、一冊の絵本を手渡された。

『大事なことはみーんな猫に教わった』(飛鳥新社刊)という書名。著者のスージー・ベッカーは、マサチューセッツ州でグリーティング・カード会社の経営をしているが、何をするにも飼い猫のアドバイスを求めるそうだ。

どのページにも好き勝手に動き回る猫の絵と、一行の「大事なこと」。「ひとりで楽しむこと」「みっともないことなんかすぐに忘れて過去にあまりこだわらないこと」「踏まれたら怒れ。踏まれたことを忘れよ」「自立を失わず人に頼るべし」…どれもが気楽に生きる秘けつだ。ストレスで疲弊した心をいやしてくれる。

鏡の前で自分を見ている猫の絵には、「自分自身を楽しむべし」とあった。これを実践するには、自己を一歩離れて客観的に見る技術が必要だ。もしかしたら猫という動物は、かなりの哲学者なのかもしれない。思索の中身をのぞいてみたくなった。