SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報1997/12/15 結婚

結婚することになり、会社のある先輩へ報告に行ったら、不思議な質問をされた。「お互い譲れない問題で、君は『赤』、相手は『白』と主張が対立したら、君は何色を選ぶ?」

どんなに好きな相手でも、自分ではない他人だ。理解し得ない他者なのだ。中沢新一氏によれば、そんな他者の存在を認めて自分の中に受け入れることを教えてくれるのが、結婚だ。とはいえ、共同生活が長期間続けば、主張が真っ向から衝突することもある。そんなときどうするか、と聞かれたわけだ。

私は「ピンク」と答えたが、赤と白の中間では双方にしこりが残るので駄目だ、と言われた。「黄色」を選べ、と言うのだ。二人とも勇気を出して、赤も白も消してしまう。そして全く別の色へ飛ぶのである。

これは夫婦に限った話ではない。自分の固執が他者の要求と衝突しても、お互いが一回自我をゼロにする覚悟を持っていれば、対立構造から脱出して発展的方策を選択できるかもしれない。ただ、問題が一つある。それは、私のようなエゴイストにも「赤」を捨てることができるかということだ。こればかりは、もう少し生きてみないと分からない。