仕事柄、顧客を価値観の違いで分類せざるを得ないときがある。だが本当は、生身の人間をくくってラベルを付けることは好きではない。ギャルやマニアのように、とがったくくりならまだしも、たいていは「こんなふうにくくられたら、嫌だろうなあ」と思う分類ばかりだ。
そもそも「価値観」なんて、後づけの理屈だとすら思うこともある。価値観よりも大事なのは、自由時間の量だ。まず、仕事・家事・育児といった不可避なことにどれだけ時間をとられるか。さらに睡眠時間を引いた後にどれくらい自由時間が余るか。余った時間が少ないと、モノ選びのパターンは似てくる。
あるCMプランナーは「〝主婦〟としてくくることをやめたい。〝サラリーマン〟と同じくらい嫌な感じ」と話していた。同感だ。気持ちのもっと深いところ、本能に近いところまでもぐりたい。
例えば、パン教室やネイルサロンを開く主婦を「自己実現したがっている」とするのは思い込みだ。根っこにある動機は、相手が笑ってくれる喜びだと思う。顧客を類型化して頭でっかちの分析をするよりも、自分自身がうれしいことは何かを考えた方がよっぽどましなのだ。