SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報1998/5/4 購買履歴データ

セブンイレブン・ジャパンは、小売業で世界最大のデータベースを新設する。「梅のおにぎりを買った二十代の男性が好んで買う客はどんな人か」「午前中にコーラを買う客はどんな人か」といった個々の購買行動が把握できるそうだ(日経四月十九日付)。

これは、「鮭より梅のおにぎりが売れる」というような従来の売れ筋分析から一歩進み、個別の消費者心理に入り込もうとする画期的な試みだ。「新しい小売業に必要なのは経済学ではなく心理学だ」という鈴木敏文会長の考えが具現化されている。

商品が使われる状況は、さまざまだ。使う人が違えば、商品の持つ意味も異なる。しかも一人の人間の中には、多様な自我が併存するのだ。常に理性的で一貫した商品選択をするわけではない。休日、夫とスーパーへ行くと、つい余分なものまでカゴに入れてしまう。嫌なことがあった後には、衝動買いをしてしまう。そのときの気分で、選ぶブランドも変わる。

近い将来、性・年齢・時間・天候などの情報に加えて、購入時の顧客の「気分」までも定量的に分析できる日が来るとしたら、広告プランニングも新境地を開くことになる。

※当時から鈴木敏文会長を尊敬していましたが、この12年後に、直接会長にプレゼンする機会が、計3回ありました。それまでは相手が偉い人でも緊張することはなかったのですが、ほぼ生まれて初めて、手が震え、声が震えそうになりました。ぞくぞくする、とはこういうことかと。圧倒的な存在感に、圧倒される。後光が差していたと思います。私が、先方の問題点を指摘するような僭越な内容を話している間、会長はずーっと私の眼をまっすぐに射るように見ていらっしゃいました。一瞬もそらさずに。矢が、絶え間なく会長の眼から私の眼へ飛んでくる。視線が実際の線として描かれて、可視化されているかのような感覚。矢をよけようとでもしたら、おそらく矢はぐるっと回転して私の背中を追いかけてきて、射抜くだろう。それは嫌なので、必死で受け止め続けました。以降3年間続いた仕事の始まりとなった3回でした。宝物のような3回。子どもたちに自慢できるのは、富士山に登頂したことと、この3回だけです。そして、この頃から関心があったデータドリブン・マーケティングに関しては、その後世界中に“ビッグデータ”の時代が到来し、私は2013年にBIプランニングの部署に異動しました。うーん。流れに身を任せて生きていると、「近い将来」ではなく、15年もかかってしまうわけです。テクノロジーは、誰かがこじあけていかないと、進化に時間がかかります。自分でこじあけられない人は、こじあける人のそばにいないとだめです。本当にやりたいことは、待ったなしで進めるべし。でないと、10年、20年なんて、あっという間です。