SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

豆の缶詰

今夜は夕食を作る時間がなくなったので、家に電話してKにご飯を炊いてもらい、スーパーで惣菜サラダを買って、週末に買っておいたすき焼き肉を焼肉にした。ペラペラの肉をつまみながら、「アメリカ人はこんな薄い肉は食べないんだろうね」と夫が言い出した。

今から約40年前、小学生になった頃のことを思い出した。父の知り合いの、目白の豪邸に住むアメリカ人一家に招待されたのだが、料理はほとんどが出来合いのものだった。

わが家では、来客があるときは、前日から母が仕込みに腕をふるって、食べきれないほどのごちそうを並べていたので、まさかの出来合いにびっくりした。

中でも、大きな缶から大きなスプーンで豆をドド〜っと大皿に盛られた映像は、最大級の衝撃とともに今でも脳裏にはりついている。

もちろんアメリカ人の中にもマーサ・スチュアートのような人もいるのだろうが、豪邸と豆の缶詰のミスマッチは強烈な原体験となった。

その後、親戚の日系三世アメリカ人が、ハワイからうちにホームステイに来ていたときも、ふだんはほとんど料理しないと言っていた。私のおばあちゃんが、ジャガイモをつぶすところからコロッケを作り、揚げたてを食べさせてあげると、あまりのおいしさに彼女はおばあちゃんにハグしたほどだ。

「料理はそんな感じなのに、どうしてアメリカ人にはいろいろと敵わないんだろう」と夫がつぶやくと、

「物事を深く考えすぎないからだよ。いざという時にとってあるんだよ」と、K。なるほど。大好きなNBAとバックトゥーザフューチャーから感じとったのか。やるねぇ。

そう、走りながら考える。正解を求めて考え尽くしても、実は正解なんてないから、結局走り出せない。

走りながら考える人がもっと増えれば、会社の仕事ももっと楽しくなるのにね。