SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2003/8/18 マッチング仮説

家族が増えたので、一回り大きい車に買い替えようと、ここ一年ほど検討を重ねている。いろいろ見ている段階では、理想を追求できる。一目で欲しいなと思ってしまうほど魅力的な車にも出会った。高価だが、全く手が届かない金額ではない。

だが、いざ購入するという段になると、気持ちにブレーキがかかる。この年齢で高級車に乗るのは生意気ではないか。子供たちがうちは金持ちなんだと勘違いしはしないか。そもそも家族全員小柄なのに、こんなに大きく立派な車に乗るのは滑稽ではないか。分不相応でないかどうかが気になるのだ。

恋愛や結婚の相手にも同じことがあてはまる。たいていの人が美男美女と付き合いたいと思っているにもかかわらず、実際に相手を選ぶ際には、高望みをせず、自分の魅力と同程度の相手を選ぶ傾向がある。これを心理学ではマッチング仮説という。

車、宝飾品、マンションなど、高価で使用期間が長く、購入に一大決心を要するものは、「自分とつりあうか」を考えて買う場合が多い。もっとも、はた目には不つりあいでも、「自分にはこの高級品がぴったりだ」と思い込める幸せな性質の人もいるけれど。